バーチャルオフィスとは、物理的な事務所ではなく、事業をはじめるための住所や電話番号などを借りることができるサービスです。
物理的な事務所を借りるレンタルオフィスなどと比べて、費用を抑えて、一等地の住所で法人登記をすることも可能です。個人事業主の方が自宅の住所や個人の電話番号などを公開しないために利用することもできます。
バーチャルオフィスとは
バーチャルオフィスとは、レンタルオフィスとは異なり、物理的な事務所ではなく、住所や電話番号等だけを提供するサービスです。
仮想の事務所、住所貸しというと分かりやすいかもしれません。
リモート勤務が一般的になり、事務所に集まって仕事をする必要が無い業種も多く、バーチャルオフィスの需要は高まっています。
多くのバーチャルオフィスは、レンタルオフィスよりもかなり低価格で、審査なども簡単です。手軽に素早く、自宅外の場所に事務所の所在地を持つことができます。バーチャルオフィスによっては、03-などの地域電話番号を取得することもできます。
バーチャルオフィスが提供している機能・サービスは、提供会社により異なりますので、当サイトを活用していただき、より目的に合ったバーチャルオフィスをお選びください。
ただし、業種などによってはバーチャルオフィスを利用できない場合もありますので、事前にご確認することをおすすめします。
バーチャルオフィスの利用目的
あなたがバーチャルオフィスを利用する目的はなんでしょうか?
- 場所にはこだわらないが、自宅の住所は公表したくない
- 開業する場所に理由があるが、オフィスを借りる費用はかけられない
が代表的な理由でしょうか。
この理由のみでバーチャルオフィスを利用する場合は、「住所が公表できて郵便等の宛先として利用」できれば十分です。
ただし、上記の理由から「バーチャルオフィスの住所で法人登記をしたい」となると、バーチャルオフィスの信頼性を考慮に入れる必要が出てきます。
何らかの理由で「できるだけ胡散臭くしたい」という需要もないわけではないでしょうけれど、一般的には起業するからには「信頼性」が必要だからです。
信頼性がないと、
- 銀行口座を開設したり
- 事業に必要な契約をしたり
- 補助金や助成金を申請したり
することができません。
バーチャルオフィスによっては、この「信頼性」が完全には得られない場合がありますので、選ぶときには注意が必要です。
重視する項目
価格
「銀行口座を新しく開設する必要がない」、「補助金や助成金を申請することもない」ので、信頼性は重視しないという場合は、「価格」を重視して選択するのが分かりやすいです。
この場合に注意しなければならないのは、「その価格は本当に安いのか」です。
例えば、月額費用は安いけれど初期費用が高い、郵便転送は全て実費などの場合、総額では高くつくことがあります。
費用を比較するときは、次の合計金額を計算してください。
バーチャルオフィスを借りる(予定)月数 ×(月額費用 + 郵送料実費などの追加費用)+ 初期費用
郵便物の受取・転送
基本的なことですが、バーチャルオフィスの住所に届く郵便物等の取扱は重要です。
少なくとも、次のことは確認しておきましょう。
- 転送回数とかかる費用について(月額費用に含まれているか、実費か)
- 受け取れない郵便物等があるか(本人確認が必要なものは通常、受け取れません)
- 店舗での受け取りが可能か(急ぎの時に必要なことがあります)
- 到着の連絡があるか(メールや会員ページなど)
住所(所在地)が公表できるか
住所が不明では郵便物は届けられませんし、もちろん法人登記もできませんので、住所が公表できないバーチャルオフィスはあり得ないと思うかもしれません。
ですが、
「バーチャルオフィスの住所を使って登記した会社のウェブサイト(ホームページ)に、バーチャルオフィスの住所を掲載してはいけない(文字情報ではなく画像として掲載しなければならない)」
という条件のあるバーチャルオフィスは少なくありません。
会社所在地を画像にして検索避けをしている会社は、あまり信頼されないでしょう。価格等との折り合いや、短期間だけだからと割り切って利用する分にはありかもしれませんが、長期間継続して利用するバーチャルオフィスとしては、おすすめできません。
こういう条件のあるバーチャルオフィスは、多くの場合、バーチャルオフィスの所在地の詳細を「契約後公開」等としてウェブサイトには掲載していませんので、ご注意ください。
銀行口座が開設できるか
一般的には、銀行口座が開設できないと事業が進められません。
法人を設立したばかりのときは、地元の信用金庫やネット銀行に口座を開設することが多いです。資本金が比較的高額、既に取引が確立しているなどの場合は、メガバンクに口座を作るということもありますが、何もない場合は難しいことが多いです。(みずほ銀行は、いくつかのバーチャルオフィスで開設サポートが提供されています。)
ネット銀行は比較的開設が簡単だとはいいますが、一定の信用度がなければ――実態として存在することが証明出来なければ、口座を開設することはできません。
この「実態として存在することが証明出来る」ことが肝心です。
例えば、信用金庫ですと基本的に、口座開設前に現地確認に来られます。本当にその場所にその会社が存在しているのか、確かめに来るのです。これは来客対応不可、会議室等のスペースなしのバーチャルオフィスでは対応出来ません。逆に言えば、現地で対応出来れば問題ないわけです。
この「現地確認」は、地域の商工会議所・商工会などの団体に加入することで回避することができる場合もありますが、絶対ではありませんし、団体に加入する費用もかかります。
ネット銀行では現地確認は基本ありませんが、「実態が存在するか」の確認はあります。確認項目は一律ではありませんが、多いのは次のことです。
- その住所で郵便が受け取れるか
- 固定電話(の番号)で電話にでるか
- co.jpドメインのウェブサイトがあるか
- 資本金が一定額以上あるか
- 営業の実態があるか(取引の証拠、契約書など)
これらはどれか一つではなく、たいていは複数要求されます。マネーロンダリング用のペーパーカンパニーなどではない、と証明できるだけの証拠が必要なのです。
バーチャルオフィスで直接関係してくるのは「その住所で郵便が受け取れるか」と「固定電話(の番号)で電話にでるか」です。バーチャルオフィスを利用して法人登記して、銀行口座を開設するなら、この2点が満たせるかは確認しておきましょう。
不安な場合は、「銀行口座開設保証」のあるバーチャルオフィスを選ぶことも一つの方法です。
電話については、「03」などの地域を特定する番号にこだわらないのであれば、別途、スマートフォンで固定電話の番号が使えるサービスを利用しても問題ありません(その方がバーチャルオフィスの電話転送オプションを利用するより安く済むことが多いですし、バーチャルオフィスを変更しても電話番号を継続利用できます)。
「03」などの地域を特定する番号が必要な場合は、それを提供してくれるバーチャルオフィスを選ぶ必要があります。クラウドPBXなどのスマートフォンで固定電話の番号が使えるサービスでは、基本的にバーチャルオフィスの住所で登記している場合、地域を特定する番号は利用できません。シェアオフィスやレンタルオフィスなどでは可能ですので、「03」などの番号を使いたい場合は、バーチャルオフィスで電話転送や代行を使う料金と、シェアオフィスを利用してクラウドPBXなどを利用する料金とを比較して決めましょう。
事業に必要な契約ができるか
決済サービスやクラウドサービスなどを利用するにも、事業所の住所は必要です。
こちらについては、銀行口座が開設できれば他のサービスも問題なく契約できるでしょう。ただし、条件がある場合もありますので、自分の事業に必須の契約がバーチャルオフィスで可能かどうか、必ず確認しましょう。
補助金や助成金を申請できるか
国や地方自治体からの補助金・助成金を受けたい場合は、銀行口座開設よりもハードルが上がります。
国は住所地の実態に厳しくはありませんが、地方自治体からの補助金・助成金は、「その地方自治体において○年以上事業を営んでいる」等の要件があることがほとんどだからです。
この「当該地方自治体において事業を営んでいる」という要件が、バーチャルオフィスで満たせるかどうかは判断が分かれるところです。
例えば、東京都の創業助成事業では次のように要件が定められています。
-
都内のバーチャルオフィスを利用していますが、「本店」「主たる事務所」「主たる事業所等」として要件を満たしますか。
-
当助成事業では、下記のいずれかを満たす施設をバーチャルオフィスとして扱います。
- 利用者の業務スペースが存在しない施設
- 契約の範囲内で業務スペースを利用することができず、業務スペースを利用するために別途使用料が必要になる施設
バーチャルオフィスを利用しており、下記のいずれかに該当する場合、申請要件を満たすこととします。
- バーチャルオフィスを会議室等として利用し、実質的に事業を行っている
- バーチャルオフィス以外に、都内において実質的に事業を行っている別の拠点が存在している
単に都内に所在地名を借り受け、郵便物等の送付を受けているだけでは、申請要件を満たすことにはなりません。
この要件をバーチャルオフィスだけで満たすためには、「会議室の利用」が必要です。つまり、「利用できる会議室が併設されているバーチャルオフィス」を選ぶということになります。
申請要件は各自治体、補助金・助成金によって異なりますので、目当ての補助金・助成金がある場合は、先に確認してからバーチャルオフィスを契約しましょう。
後から、「このバーチャルオフィスでは申請要件を満たせない」となっても後の祭りです。契約にかかる初期費用だけでなく、登記も変更しなければならず、その費用もかかります。
まとめ
銀行口座の開設や補助金・助成金の申請にも対応出来る、信頼度の高いバーチャルオフィスを選ぶための要件をまとめると
- 郵便物が受け取れる
- 固定電話の番号がとれる(「03」などの地域番号にこだわらなければ、バーチャルオフィスのサービスになくても、固定電話の番号が取得できるサービスを別途利用すれば大丈夫)
- 利用できる会議室が併設されている
となります。
これらの要件と費用を考えて、あなたの起業に最適なバーチャルオフィスを選んでください。
当サイトの「条件から探す」検索をご活用いただけましたら幸いです。